萩美術館・浦上記念館「千葉市美術館所蔵 新版画-進化系UKIYO-Eの美-」

「浮世絵版画」と言うと、私を含めて多くの方が北斎、広重、歌麿などの巨匠が手掛けた、どこか荒削りな雄々しい風景画や人物画を思い浮かべられるのではないでしょうか(#^о^#)江戸時代のジャポニズムを鮮やかに刷り込んだ大胆な捉え方!迫力を感じますよね。

現在、萩市にある県立萩美術館・浦上記念館では…江戸の浮世絵版画から進化して大正~昭和初期にかけて盛んに制作されて大衆に人気を博した「新版画」が約190展も披露される特別展が開催されています。

千葉市美術館所蔵 新版画 -進化系UKIYO-Eの美-

そもそも新版画とは?江戸時代の版画とは違うの?というところから学芸員の吉田洋子さんに迫ってきました◎

新版画とは?!版元(現在で言うところのプロデューサーですね)である渡邊庄三郎氏が、浮世絵版画の高度な木版技術と、画家の個性を尊重するアート性の高い木版画を構想して創始したもの。

制作方法は、それまで流行していた浮世絵版画と同じく「彫師」「絵師」「摺師」と作業工程ごとに分けて専門の職人が制作する方法を取っています。

明治30年頃には浮世絵版画の流行が落ち着き始め…というよりも浮世絵カルチャーの衰退が見え始めたことから、この素晴らしいジャンルの立て直しを図ろうと、当時の版画界に新しい風を吹かせるために渡邊氏が奔走します。

そこで彼が版画文化の魅力を伝えようと市場ターゲットに定めたのは…海外!敢えて国内のみではなく、日本の何気無いノスタルジックな日常の一コマや、オリエンタルで時には奥ゆかしい風情溢れる情景や人物を描いた作品の数々を感性の異なる海外の方へ向けて発信してゆきました。手先の器用な日本の職人だからこそ表現できる繊細な彫り具合や、そこに乗せた海外の方にも受け入れられやすいようなビビッドな色使いなどがヒットして新版画は流行の兆しを見せたのでした。

当時もフリッツ・カペラリといったオーストリア人、エリザベス・キースやチャールズ・バートレットなどのスコットランド、イギリス人と…腕の良い外国人新版画作家も活躍していたようです。

いま名前が挙がったエリザベス・キースの作品は今回の特別展にも飾られていて、吉田さんのイチオシでもあります(*^^*)

「藍と白」と名付けられた作品ですが、タイトル通りに藍色をテーマに制作されています。浴衣姿の女性が骨董屋の店先に並ぶ染付磁器や、あの葛飾北斎作の「富嶽百景神奈川沖浪浦」を見ているという図柄。新版画作品の中にモチーフとして北斎の作品を登場させるなんて…!!日本へのリスペクトを感じますよね。

描かれている浴衣姿の女性は日傘と扇子を手にしていて、また店先には朝顔が咲いていることから暑~い夏の日の一瞬であることが見て取れますが…藍色で纏めてあるので、とっても涼やかな印象を受けます。(エアコンが普及する前の昔の人は、暑い時期は涼を求めて、こうして涼し気な絵などを鑑賞をしていたのでしょうか…)

キースは独学で絵を学び、日本に滞在中に開いた個展を見た渡邊氏から新版画の制作に誘われたのだそうです。渡邊氏は海外画家の新しい感性を新版画に取り入れようとアンテナを張っていたのですね。

上でご紹介した「藍と白」/エリザベス・キース は撮影OK作品の対象にもなっていますので、是非会場で実物をご覧ください♪

近年ではスティーブ・ジョブスが趣味で収集していたことも話題になっていた新版画。

浮世絵版画とはまた異なった写実的な味わいがあります。こちらのパネルとしてディスプレイもされている作品は山村耕花が手掛けた「梨園の華 十三代目守田勘弥のジャンバルジャン」。

髪の毛の部分が、まるで鉛筆画のように細くリアルに仕上げられていてビックリでした。

役者絵版画の山村耕花、美人版画の伊東深水、風景版画の川瀬巴水と…古き良き、でも新しき!新版画界を代表する画家たちの作品が一堂に会した今回の特別展、浮世絵版画との共通点や違いをお楽しみください。

 

\5月22日(日)を区切りに、以降は後期展示として作品の入替もありますよ~!余すことなくご覧ください☆/

千葉市美術館所蔵 新版画 -進化系UKIYO-Eの美-

4月23日(土)~6月19日(日)

山口県立 萩美術館・浦上記念館    0838-24-2400

観覧料 大人 ¥1500/学生 ¥1300/70歳以上の方 ¥1200   ※18歳以下無料

webから萩美術館・浦上記念館の常設作品を鑑賞することができるやまぐちバーチャルミュージアムのサイトもチェックしてみてくださいね(*^▽^*)

ロビーには小早川清作の「ダンサー」パネルも~。「是非お揃いの(?)イナバウアーポーズで記念撮影もされてみてくださいネ。」と吉田さん!吉田さんオススメ撮影スポットだそうです(*ノωノ)